離婚・不倫慰謝料請求

離婚について

令和2年の離婚件数は19万3253件(厚生労働省、離婚に関する統計)、2~3分に一組が離婚しています。離婚するときには、子供をどうするか、財産をどうやって分けるか、住む家や生活費をどうするかなど、考えなければいけないことが色々あって、たくさんのエネルギーが必要になります。とても大変なことですが、何より大切なことは、よりよい離婚後を迎えるために、準備をどうするかや協議・手続きの対応の仕方を真剣に考える必要があるということです。

離婚の方法

離婚の方法としては、離婚の話合いがまとまって離婚届によってする協議離婚、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて、調停で話がまとまってする調停離婚、調停が不調に終わった後に離婚訴訟を提起して、判決によって離婚が認められる裁判離婚などがあります。

離婚原因

話し合いによって離婚届を提出する協議離婚の場合は、どんな理由であっても離婚できます。調停離婚も、家庭裁判所での調停において夫婦がともに離婚に合意さえすれば理由を問わず離婚できます。
しかし、裁判(判決)による離婚は、相手方配偶者が不倫(不貞行為)をしたなどの離婚原因(民法第770条I①~⑤)が必要となります。ただし、離婚の原因を作った当事者(有責配偶者といいます)から離婚の裁判を求め離婚が認められることは原則としてありません。

民法第770条 ①不貞行為
②悪意の遺棄
③3年以上の生死不明
④回復の見込みのない強度の精神病
⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由

いわゆるDV、配偶者からの暴行や虐待行為は、婚姻を継続しがたい重大な事由にあたることになります。また、長期間の別居も婚姻を継続しがたい重大な事由にあたる場合があります。別居期間が何年と決まっているわけではありませんが、5年程度が一つの目安になります。

有責配偶者について

裁判所は、「有責配偶者」の離婚請求を一切認めていませんでしたが、ついに態度を変えるに至りました(昭和62年9月2日判例)。
もちろん、有責配偶者からの離婚請求を、簡単には認めず、以下のような、厳格な要件の下で認めたのです。

  1. 別居期間が長期間で、
  2. 二人の間に未成熟な子がないこと。
  3. 落ち度のない側にとって、苛酷な状況にならないこと。

婚姻費用の分担

離婚するしないで揉めたとき、やはりお金・特に生活費をどうするかが大きな問題となります。夫と別居した妻が夫から生活費を渡されない場合、夫に対し婚姻費用分担の調停(審判)を申し立て、ときには夫の給料を差し押さえることもあります。
婚姻費用の額は、当事者間で合意できない場合、権利者・義務者双方の収入及び子供の人数や年齢を基準に、家庭裁判所作成の算定表を目安として決定されます。

財産分与と慰謝料

財産分与とは、夫婦が婚姻生活の間に協力して築き上げた財産(夫婦共有財産)を分けることです。この場合は、離婚の原因を作った当事者(有責配偶者といいます)であっても、原則として公平に分けられることになります。ただし、離婚後に分与を求める場合は2年の期間制限がありますので注意が必要です。
慰謝料とは、離婚原因につき責任のある者が相手方に対し、精神的苦痛を慰謝するために支払う金銭をいいます。慰謝料は民法上の不法行為に基づく損害賠償請求権ですので、損害及び加害者を知ったときから3年という期間制限があります。

親権と養育費

親権とは、親が未成年の子に対して有する様々な権利・義務の総称です。子を監護・教育し、財産を管理し、法定代理することができます。離婚する夫婦に未成年の子がいる場合は、夫婦のどちらかを子の親権者に定めなければなりませんが、その後、親権者を変更する場合、家庭裁判所の調停又は審判を経る必要があり、容易に変更できません。

親権に争いがある場合

夫婦の話合いがまとまらず、親権者が決まらない場合、協議離婚はできませんので、裁判所での調停や裁判で裁判官の判断を仰ぐことになりますが、そのときには、子を監護する親の意欲や能力、経済状況、今までの監護状況、子の年齢や性別、発育状況、子の希望などさまざまな事情を考慮していくことになります。
親権者を決定するにあたり重要とされる要素として次のようなものがありまあす。

① 現在の状況

生活環境が変化することは、未成年の子にとって精神的・肉体的に大きな負担となる可能性があるため、虐待など特別な事情がない限り、現在の生活状況を続けることはひとつの要素となります。

② 母性優先

未成年の子、とりわけ乳幼児の発育には母親の存在が不可欠であるとの考えから、親権者を決めるにあたっては母性優先とされる傾向があります。

③ 子の意思

親権者が誰になるかは子にとってとても重要ですから、子の意思を考慮すべきことはいうまでもありません。法律上は、親権者を誰にするか決定するにあたり、未成年の子が15歳以上であるときには子の意見を聞かなければならないとされています。

養育費とは、子の監護に必要な費用であり、たとえば母が親権者となり子を引き取り監護している場合、通常、父が養育費を送金するなどします。
養育費の額は、父母間で合意が調えば問題ないのですが、合意に至らない場合、権利者・義務者双方の収入や子の人数・年齢等を考慮して家庭裁判所が判断することになります(婚姻費用と同様に算定表が目安になります)。

養育費の増額・減額

一度養育費を決めたとしても、その後に、離婚した時には想定していなかった事情が発生した場合には、養育費の増額、減額をすることが可能です。
養育費を増額したい、または減額したい、という場合には、まずは相手方と話合いをすることになります。 そして、話し合いをしても納得してもらえなかった場合、家庭裁判所に対して、養育費増額(減額)調停を申し立てます。調停でも話がまとまらない場合には、調停は審判に移行し、裁判所の判断に委ねることになります。

離婚後の氏

結婚したときに相手の氏を名乗ることにした夫婦の一方は、離婚をすると、原則として、婚姻前の氏、旧姓に戻ることになります。
旧姓に戻る場合、①従前の戸籍に戻る(結婚前の父母の戸籍に戻る)、②新しい戸籍をつくるのどちらかを選ぶことになります。
他方、離婚した後も、婚姻していたときの氏を名乗りたい場合には、離婚の日から3か月以内に届出をすることによって、婚姻中の氏を名乗ることができます。
ただし、一度届出をして婚姻中の氏を選択すると、その後に氏を変更するには「やむを得ない事由」(戸籍法107条1項)が必要になるので、慎重に考える必要があります。
なお、子の氏は、当然には変更されないので、親権者となった母親が、子を自分の戸籍に入れるためには、家庭裁判所に子の氏の変更許可の申立てをすることになります。

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代表弁護士 泉 英伸

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