遺贈(いぞう)
遺贈とは,遺言によって遺言者の財産の全部または一部を無償で相続人等に譲り渡すことをいいます。特定の財産を譲り渡す遺贈を特定遺贈といい,遺産の全部または一定の割合を譲り渡す遺贈を包括遺贈といいます。
遺贈を受ける人のことを受遺者(じゅいしゃ)といいます。受遺者は,自然人(生身の人間のこと)だけでなく,法人であってもよいとされています。遺言の効力が発生する以前に受遺者が死亡した場合,遺言の効力は生じません(民法994条)。
遺贈にもとづいてなされる手続や行為(目的物の引き渡しなど)を実行する義務を負う人のことを遺贈義務者(いぞうぎむしゃ)といいますが,遺贈義務者となるのは,法定相続人です。包括遺贈を受けた包括受遺者も遺贈義務者となります。
相続では,遺産は法定相続人に引き継がれることになりますが,遺贈をすることによって相続人以外の第三者に対して財産を譲り渡すことができます。ちなみに,遺贈と似たものとして死因贈与(しいんぞうよ)というものがあります。死因贈与とは,財産を譲り渡そうとする人の死亡によって効力が生じる贈与の契約のことをいいます。遺贈と似ており,遺贈に関する民法の規定が準用されますが(民法554条),遺贈が遺言者の一方的な意思表示であるのに対し,死因贈与はあくまで契約ですので,贈与をしようとする人と贈与を受けようとする人の意思表示の合致が必要となります。