時効

時効とは、ある事実状態が一定の期間(時効期間)継続していることに基づき、その事実状態に合わせて権利や法律関係を取得、消滅または変更させる制度のことで(民法144条以下)、取得時効と消滅時効に分かれています。

取得時効と消滅時効のいずれも、時効期間が経過することによって、時効による法的効果は時効の起算日に遡りますが,そのためには時効によって利益を受ける人が,時効の成立を自ら主張することによって(これを「時効の援用」といいます)はじめて権利関係の変動が確定します。

取得時効とは、他人の物や財産権を一定期間継続して占有する人に、その権利を与える制度です。

例えば,AがBの土地に家を建てて、自分の土地として20年間住み続けた場合(占有開始時に善意無過失の場合は10年)に、Aがその事実をBに主張すれば、住んでいる土地の所有権を取得することになります。

消滅時効とは、権利が一定期間行使されない場合に、その権利を消滅させる制度です。

例えば、AがBにお金を貸したが、弁済期を過ぎてもBがお金を返さなかった場合に、Aが必要な措置を何も取らず、権利行使をしないまま10年が過ぎたという場合に、Bは、Aが持っている貸金債権は時効によって消滅したことを主張できます。

時効制度の存在理由としては様々な議論がされていますが、一般的には次の3つ理由が挙げられます。

1.長期に渡って継続している事実状態が存在する場合、その事実状態を前提に構築された社会秩序や法律関係の安定を図るため。

2.長期間が経過した過去の事実を立証することは困難であるため、過去に遡ることに限界を設けてその過去の事実の立証の困難を救済するため。

3.正当な権利者であったとしても、権利を有しているにもかかわらず、それを行使せずにいた者は、法の保護を受けるに値しないため(権利の上に眠るものは保護に値せず)

ただし、以上の3つの存在理由のいずれも、時効制度の一面しか捉えていないといえます。時効制度には上記で説明したように、取得時効と消滅時効があり、時効制度全般を一つの存在理由だけで説明するには不十分ですから、存在理由を多元的に考えるのが通説です。

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代表弁護士 泉 英伸

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