悪意の受益者
不当利得について定める民法第704条には,「悪意の受益者は,その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において,なお損害があるときは,その賠償の責任を負う」と定められています。この規定によれば,不当利得の利得者が,「悪意の受益者」にあたる時は,現存利益(不当利得返還請求がされた時点で利得者の手元に残っている利得分)ではなく,受けた利益の全てとそれに利息をつけて返さなければなりません。
ここでいう「悪意」とは,ある事実を認識しているとか知っているという意味です。日常使われるように,相手を害するなどという意味ではないので注意が必要です。そして,不当利得においては,利得することについて,法律上の原因がないことを知っていたのであれば,「悪意の受益者」にあたることになります。
いわゆる過払金返還請求は不当利得返還請求の法理によります。ですから,過払金を返還しなければならない貸金業者が悪意の受益者である場合には,過払金全額と,それに対する利息を付けての返還を請求することができます。
「悪意の受益者」というには,利息制限法に規定する制限利率を超える利率の利息だと知っていれば,貸金業者が一応悪意の受益者にあたると考えられます。なぜなら,みなし弁済規定(一定の要件のもと,制限を超える利息の受け取りを認めるもの)が適用されない場合,悪意の受益者と推定されるという判例があるからです。