抵当権
抵当権とは,債務者や物上保証人と言われる第三者が債務を担保するために提供した物について,担保提供者がその物を使用したり収益を図ったりすることができるが,債務が支払われなかった時にはその物の価額から債権者が優先的に弁済を受けられるという権利(民法369条以下)です。これは担保物権と言う権利の一種です。
債権者(抵当権者)は,債務者または物上保証人(抵当権設定者)との間に抵当権設定契約を結んでその不動産や権利の上に抵当権を設定します。第三者に対して抵当権の効力を主張するには不動産登記が必要になるので,通常は抵当権設定登記も同時になされます(177条)。
抵当権は,担保提供者が目的物を占有するため,抵当権が設定されている事が他からわかるように公示して取引の安全を図る必要があります。ですから,登記・登録制度のある物や権利に限って抵当権を設定することができます。民法上,土地や建物などの不動産,地上権,永小作権が抵当権の目的物となりますが多く利用されているのは不動産に対するものです(369条)。
また,公示する方法のある自動車や立木,船舶,鉱業権,漁業権などは,各種特別法によって抵当権を設定することができます。
同一の不動産について抵当権を重ねて設定することができ,それぞれの抵当権の優先順位は設定された先後によります。具体的には登記の設定された順番に従って優先弁済を受けることになります。
債務者の弁済が遅れた場合など,抵当権者は裁判所に抵当権に基づく不動産競売を申し立てます。競売となって買受人が現れた場合には,競売代金が納付されるので,抵当権者はその代金から他の一般債権者に優先して弁済を受けることによって,債権の回収をすることになります。