遺産分割の話し合いがまとまりません。どうすればいいでしょうか。
質問:
相続人の間で話し合いをしましたが、争いになって、財産をどう分けるかについてまとまりません。どうすればいいでしょうか。
回答:
遺産分割(いんぶんかつ)の話合いがまとまらない場合,家庭裁判所に対し,遺産分割の調停(ちょうてい)または審判(しんぱん)の申立てをして,財産の分け方を決めることができます。
解説:
◯ 遺産分割調停
調停とは
調停は,裁判所で話し合いにより紛争を解決する手続です。もっとも,話し合いといっても当事者だけで話し合いをするのではなく,家事審判官(裁判官)と調停委員が間に入るなどして話し合いを行います。
※ 通常,まずは調停を申し立て,調停がうまく行かない場合に審判に移行することが多いのですが,最初から審判を申し立てることもできます。最初から審判を申し立てた場合,家庭裁判所が,調停から始めた方がいいと判断したときには,調停から始まることになります。
調停はどこに申し込む
遺産分割調停は,①相手方の住所地を管轄(かんかつ)する家庭裁判所,または②当事者が合意した家庭裁判所に申し立てます。
例1:千葉市に住んでいたA男さんが亡くなって,相続人がB子さん(千葉市に住んでいる),C太さん(東京に住んでいる)の場合に,B子さんがC太さんとの間で調停をするとき,
①東京家庭裁判所(相手方であるC太さんの住所地)
②千葉家庭裁判所(B子さんとC太さんが合意している)
このどちらかに,調停を申し立てることができます。
調停には誰が参加する
遺産分割調停には,相続人のほか,包括受遺者(ほうかつじゅいしゃ:遺産の全部または一部を遺言によって得た人)なども参加することができます。
例2:例1で,A男さんが相続人ではないD美さんに「遺産の1割をあげる。」という遺言を残していたとき,B子さん,C太さん,D美さんの3人が調停に参加することになります。
調停が成立したとき
遺産分割調停で当事者間の合意が成立し,家事審判官(裁判官)と調停委員も,その合意によるべきと判断した場合には,調停調書が作成され,調停が成立します。
※ 調停調書に記載された内容は,確定した審判と同一の効力があります。つまり,調停が話し合いだからといって,合意した内容を守らない場合,強制執行(きょうせいしっこう)をすることができます。
例3:例2で,A男さんの土地や家はB子さんが得ることになりましたが,その価値が大きかったため,B子さんはC太さんとD美さんに100万円ずつ支払うことになったとします。それにもかかわらず,B子さんが100万円を支払わないとき,C太さんやD美さんは,B子さんの財産を強制執行することができます。
調停が成立しなかったとき
当事者間で合意の成立する見込みがないときや,成立した合意が相当でないときは,調停は不成立(不調)として終了します。調停が不調のときは,自動的に遺産分割審判の手続が始まります。
◯ 遺産分割審判
審判とは
審判とは,裁判官の判断により紛争を解決する手続です。「当事者間の話し合い」による解決でない,という点で調停とは異なります。
遺産分割審判では,必要であれば,裁判官が事実関係を尋ねる審尋(しんじん)を行ったり,証拠調べを行ったりしながら,相続財産の種類・性質・相続人の年齢・職業・生活状況など,さまざまな事情を考慮したうえで,裁判官が判断を下します。
審判には法的強制力があるので,審判の内容に従って遺産分割がなされます。
審判はどこでされる
遺産分割の審判は,被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行われます。そのため,場合によっては,調停を行った裁判所と違う裁判所で審判を行うということもあります。
例4:例1では,遺産分割の審判は,千葉家庭裁判所で行われます(A男さんが最後に住んでいたのは千葉市)。
審判の結果に不満があるとき
審判は,当事者の合意がなかったとしても下されます。審判に不服がある場合には,審判の告知を受けてから2週間以内に高等裁判所に対して不服を申し立てることができます(即時抗告(そくじこうこく)といいます)。