認知されていない子に相続権はあるのでしょうか・・・?
質問:
私の家庭は母子家庭で、私は実の父から認知されていません。先日その父が亡くなったことを知ったのですが、認知されていない私にも相続権はあるのでしょうか。もし相続権がないとすると、私はどうしたらいいのでしょうか。
回答:
認知されていない子に相続権はありません。
お父様が亡くなられてから3年以内であれば、裁判所に対して認知を請求する事ができます(「死後認知」といいます)。このようにして認知された後であれば、遺産分割など相続に関する手続に加わることができます。
解説:
◯ 認知とは
婚姻している法律上の夫婦の間に生まれた子は、「嫡出子」といい、そうでない男女の間に生まれた子は、「非嫡出子」といいます。
そして、非嫡出子の親子関係のうち母子関係は、「分娩の事実」あるいは「懐胎、出産」によって決定されます(A子さんからBちゃんが生まれたら、A子さんとBちゃんは親子ですよ、という当たり前のことです)。
しかし、非嫡出子の親子関係のうち父子関係は、「認知」がないと法律上の親子関係が認められません。このように、法律上の夫婦でない男女から生まれた子と父との親子関係を決定する方法が、認知です。そのため、認知がなされていない時点では、子と父との間に親子関係はなく、子は父が亡くなった場合でも相続権がありません。
◯ 認知の方法
① 任意認知
父が自らの意思で認知することを、任意認知といいます。市町村役場(実父の本籍地・子の本籍地・届出人の所在地のいずれか)に認知届などを提出します。もっとも、本質問では実父が亡くなっているので、この方法によることはできません。
※ 任意認知は、父が遺言ですることもできます(「遺言認知」といいます)。
※ 成年の子を認知する場合や、子が出生する前の胎児の段階で認知する場合、子が死亡した後に認知する場合などには、特別の条件が必要になります(たとえば、成年の子を認知する場合には、子の承諾が必要になります)。
② 裁判認知
父が任意認知をしなかったり、できなかったりする場合に、子が実父に対して裁判によって認知を求めることを、裁判認知といいます(「強制認知」ということもあります)。
裁判認知の場合、まずは家庭裁判所に調停を申し立て、調停の場で話し合いを行います。その結果、認知について合意に至れば、家庭裁判所が「合意に相当する審判」を行います。認知について合意に至らないときは、家庭裁判所に対して、認知の訴えを提起します。
※ 子が未成年者であるときは、母が法定代理人として申立などを行います。
そして、ご質問のように、父が死亡した場合であっても、父の死亡の日から3年以内であれば、家庭裁判所に対して認知の訴えを提起することができます。
※ 通常の裁判認知では、父を相手に訴えを提起しますが、父が死亡している死後認知では、検察官を相手に訴えを提起します。
◯ 認知の効果
認知がなされると、子は「認知がされたときから」ではなく、「生まれたときから」父の子であったことになり、父の相続人となります。
※ 非嫡出子の相続分について、以前は嫡出子の2分の1と定められていましたが、平成25年12月5日に民法の一部が改正され、平成25年9月5日以降に開始した相続については、嫡出子と非嫡出子の相続分は同じになりました。
また、最高裁判所の判断により、平成13年7月1日から平成25年9月4日までに開始した相続についても、嫡出子と非嫡出子の相続分は同じになりました。 ただし、平成13年7月1日から平成25年9月4日までに開始した相続であっても、遺産分割などが終わってしまっている場合には、それを覆すことはできません。
◯ (死後)認知された後の相続手続への参加
① 遺産分割が終わっていないとき
相続人として、遺産分割に参加することができます。
② 遺産分割が終わってしまっているとき
もう一度遺産分割を行うよう求めたり、遺産分割の無効を求めたりすることはできません。もっとも、他の共同相続人に対して、相続分相当について価額による支払を請求することができます。